また物騒な単語を使い、クレストはそう言った。


きっと彼が言いたいのは…世界といっても宇宙規模の大きな異世界ではなく、同じ国あるもう一つの世界のことだろうか。

自分達が村で、平凡で静かで…穏やかな生活を送っていたその裏で起こっている…自分達には解らない世界の出来事。

表世界で出来ないことが出来る裏世界。
否、表世界では許されない制裁や悪事ができ、物資や情報も手に入る…表世界では出来ないことが許される、危険な世界。


………それが裏世界。






「……それが裏世界さ。血の気が多い奴が多いし、訳ありの奴らばっかだ。国に守られることがほとんどないから、殺人が多いわ騙し合いや裏切りが多いわ…汚ねえ世界だぜ。裏世界の奴らが死んだって国はどうも思わねーし、表の奴らに手を出さなきゃほとんど自由な世界さ」



へらへらと、相変わらず緊張感のない笑みを浮かべて、まるで他人事かのように言うクレスト。

どうしてだろうか。



「………クレストは…裏世界の人なのか…?」



彼の笑っているはずの表情が、どこか悲しげに見えたから。



「…うん、そうだね」



彼は笑っているはずなのに、強がっているように見えるのは何故だろう。






















「というわけで、君達は今狙われている状況にあるんだ。もし敵が…例えばヒュネットの騎士とか兵士が君達を襲って来たら、…国王騎士や坊ちゃんを盾にしてでも自分達の身を守ってね。ああ、坊ちゃんは一発刺されたくらいじゃ死なない無敵だから、どんどん盾にしてあげてね」



長いクレストの説明が終わり、一気に緊張感が解れた。

クレストの口調は、柔らかく、ふざけたようにも聞こえるが、妙な緊張感があり気が抜けない。








彼が凡人ではないのが、その普通ではない雰囲気で明らかだった。