ゴッドネス・ティア

騒がしかった馬車の外とは違い、馬車の中は相変わらず薄暗く、静かだった。

外の騒ぎで跳び起きたが、先輩方のように外に飛び出しては行かなかった二人…華蓮とシャランは壁に背を預け、静かに声を漏らしていた。


窓から夜明けの太陽の光が差し込み、一気に馬車内は明るくなる。気温も少しばかり上昇した気がした。






「……久しぶりですね、ル・メイさんの…情緒不安定。………ダメですよ華蓮さん、後で喧嘩吹っかけちゃ」


「……なんだよ、オレがいっつもル・メイを虐めているみたいな言い分だな」


「…………違うんですか?」


「違うわけじゃないけど」



だってル・メイが厄介事増やしてくるからムカつくんだ、とぶつぶつ呟く華蓮。

シャランはそれを綺麗に無視し、一つ深い息をついた。










「……みんな、やっぱりいろいろと背負ってるんですね。香月さんも、リュンマさんも、ル・メイさんも、華蓮さんも……あのクレストとかいう謎の人も……何か背負ってるんでしょうね。みんな一緒です…私も」


「…………確かにシャランは…大変だった。…叫ぶわ暴れるわ刃物振り回すわ香月さんに決闘を申し込むわ………本当、入団したての頃は頭が痛かった」


「……ふふ、それも良い思い出でしょう?」


「何処がいいんだよ。シャランが暴れたせいでリュンマさんがブチ切れて…………………死ぬ程怖かった」


「はい、私もです。リュンマのお叱りのおかげで私は改心出来ましたし」



苦々しい思い出を思い出し、華蓮は苦々しい笑みをつくる。

だが当人シャランは面白そうにクスクスと、彼女には珍しい笑みを浮かべていた。































「……みんな、大変なんですね。私も華蓮さんも、国王騎士も教会の使者も、国王も教皇も、エルフも人間も…………………何も背負ってない人なんて…………いないんですよね」