ゴッドネス・ティア

我が耳を疑った。

これは悪い冗談なのだろうか。いや、冗談であってほしい。




楽しそうに、恐ろしい程にこやかな笑みを浮かべたリンを見上げて、つられるように自分も笑みを浮かべてみた。
きっと素晴らしく引きつっているだろうが。




「………冗談だろ?」


「………んー?」



出来る限りの笑みを顔を貼付けて、リンのご機嫌を伺う。

リンは相変わらず機嫌がいいらしい。更に笑みを深めて、ゆっくりと口を開いた。















「……やってみればわかるんじゃない?」



何を。

そう聞く前に、何か圧迫感が我が身を襲った。

確かめるまでもなく、それはリンがレオナの腹に馬乗りになった証拠なのだが。

冗談だ。きっと凄く悪い冗談なんだ。そう思いたい。

ちらりとリンを見れば、
『本気と書いてマジと読む』……今のリンの目を見れば、正にそれだ。

ギラギラと輝いているように見える瞳の奥に、何か恐ろしい物が潜んでいるような気がした。



やばい。非常にやばい。
これは危険だ。逃げなければ。

そう本能が叫びを上げ、大人の魅力に魅せられていた自分を叱った。

悪夢を振り払うように、目を醒ますように頭を左右にぶんぶんと振った。

少し長くなった赤い髪が自分の視界にちらつく。




「抵抗すんなってー」


「………?!」



片手を掴むリンの手を振り払おうとしたが、その前にリンが素早くレオナの両腕をベッドに押し付けた。

女性の力だ、なんとかできる。と思ったが、意外にもリンの力はなかなか強い。

レオナが特別弱いわけではない。きっとリンとレオナの力はほぼ互角なのだ。

その証拠に、リンの力を振り払うとすれば……渾身の力を振り絞り抵抗すればなんとか出来そうな気がする。
びくともしないわけじゃない。


だが、リンの方が有利な体制のためか、なかなか思うように抵抗出来ない。

それを面白がって見ているリンが悪魔に見えた。