「なんなんだお前は!いったいどういうつもりなんだ〜〜!」


「そんなこと言われましても…………ぁ、痛いっ!ちょ、痛いですからっ!叩かないでくださいよぅっ」


「なーにが、『くださいよぅっ』だ!かわいこぶりやがって!!」


「かわいこぶってないですよ〜っ」



服が汚れてしまった怒りと長時間のイライラでサロナのお怒りゲージはすでに頂点を越えていた。

色白の肌を真っ赤にしてジョージにくってかかるがまたいつものマイペースに流される。



「ほ、ほらサロナ様見てください!これこれ!埃がとれて汚れた灰色からくすんだ赤茶色にっ!」


「ああん?」



まるでそれを楯にするかのように、埃がすっかりとれて赤茶色の表紙があらわになった本を前に突き出す。

それを睨むように見やるサロナ。




「そ、それに、この本凄いんですよっ!
知らない文字ばかりで書かれていて全然読めなかったんですが、何語なんでしょうかね〜?」


「……読めなかっただと…?」



何故かサロナの眉間に、今よりいっそう深いシワが刻まれた。

ジョージの突き出した本を了承も得ず剥ぎ取り、クルリと体ごと後ろを向く。


主人のまたまた身勝手な行動を不思議に見ながらジョージは小さな黒い背中を眺める。




変な物でも見るように両手におさまるそれを見下ろすサロナは、その鋭い眼光のまま表紙を手にとった。


読めているのかただ無言で本に目を落とす。


彼女を眺めるジョージはさくさくとそれをやってのける主人に尊敬の眼差しを向けていた。









だがしばらくすると………バサリと渇いた音が空気を通して聞こえた。


それはもちろんサロナが手に持っていた本を落とした音であって、……彼女は拾いもせず何故か青ざめた顔でジョージを振り返った。


先程と打って変わった表情にジョージは眉を潜める。