「………サロナ様?」



うんともすんとも言わず大人しくしていたジョージが不思議そうに口を開いた。


……どうやらサロナは無意識のうちにしかめっ面になっていたらしい。


深く考え事をすると、眉間にシワが寄ったり顔が強張ったりする。

いけない癖だ、なんとかせねば。



「……ただの日記だった。もっと難しいことが書いてあると思ったんだがな………」


「いや…あのサロナ様……」



面白味も何にもないただの日記をその辺りに投げ捨てて、溜息をつく。

何かジョージが言いたげだが無視だ。



「なーんにも収穫なし。
ったく、なんて奴だあいつは……」



ちょろまかと辺りをうろうろ歩きまわり、欝陶しいと思えば纏わり付き、必要な時には証拠品もなく消え去るあいつ。

………………厄介な。









「……うっぜぇ」



思い出しただけで腹が立ってきた。

相変わらずの険しい顔つきで悪態を吐く主人に冷汗を浮かべるジョージは乾いた笑みを浮かべている。



「あの……サロナ様……」


「んだよ、今ジョージの話なんて聞いてる暇ねんだよ」







……暇ないって貴女、寝転んでるじゃないすか。


なんて小心者ジョージが言えるわけはなく、それは自身の胸へ押し込んだ。

そして、いつから持っていたのか、両手に持っている物をサロナを差し出す。





「………これを見てもそんなことが言えますか…?」


「……………?」



もはや睡眠モードに突入しそうなサロナの頭上でちらされる物。


重い瞼を擦り上げ、ずしりとまた重いそれを受け取る。


寝転んだ体制のまま、両手に本を掲げてみる。


………かなり古い本。


また本か、と溜息をつきながら灰色の表紙をめくった。


埃くさい……いや、実際に埃が舞い落ちてきた。

それは当然のようにサロナの目、鼻、口、目掛けて降り懸かり、勢いよくむせる。