その名前は、忘れ去りたい過去の友人の名。


いつも傍にいた、彼女の名……。

















しばらくそのページを眺めていると、サロナは笑みを消し去り、さくさくとページをめくり始めた。



ところどころにインクの飛び散ったあとがあったり、ページに折り目がいくつもあったり、持ち主の雑な性格が伺える。










…………日記だ。


それは……ジョージの言ったとおり、日記だった。


ごく、普通の。

















―――今日は雨だった。
なんか辛気臭くて嫌んなる。
今日もサロナはキャンディばっかり食べてた。あたしもほしい。
だからあたしも食べた。
サロナは絶対ケチでくれないから取った。
盗んだんじゃないよ、サロナの貯金箱にコインを一枚いれてあげたんだから。
サロナの目を盗むほうがなかなか難しかったかな。
あたしはもちろんブラッディベリー味を取った。
棒付きキャンディってなんかワクワクするよね。
雨だから飴みたいな、なんちゃって。
明日は晴れがいいな〜。
















…………普通だ。


なんの変哲もない、ただの日記。



予想外の平凡さに驚いた。


あいつなら、もっともっと研究の成果のことを書くかと思ったが………。







それより、あいつがいつのまに我が愛しきキャンディをいつ盗んだのか気になる。