撫でるように触れ、特別厚いわけでもない薄汚れた赤茶の表紙に警戒の眼差しを向けながら開いた。
まず目についたのが、年代物のためか少し黄ばんだ元は白かったであろうページ。
そこには、まるで書きなぐったような荒い文字が書き記してあった。
ページいっぱいに大きな字で、数文字の短いサイン。
「………やっぱり、…これは………」
「これサロナ様のご友人様の日記でしょうか?
えーと…………………、
……すみません、見ませんから、もう見ませんからそんなに睨まないでください」
後ろからひょっこりとのぞき見しているジョージを一睨みすると、聞き分けの良い部下は回れ右をした。
それを見届けてもう一度、視線を落とす。
荒々しいというか、ただ汚いというか……、乱暴に綴ってあるその文字をそっと指でなぞった。
こんな文字、読まなくても把握できた。
この癖のある乱暴な文字を書くのは……あいつしかいない。
事実、その文字は書き手の人物を確信させるものだった。
眺めていると自然に、憎らしいような、微笑ましいような…だが少女らしくはない笑みが零れた。
――――ティル
…………ティル、
………ティル、
……ティル…………。
長年口にしていないその短い名前を、無意識に何度も何度も呼んでいた。
心の中で、何度も……。
まず目についたのが、年代物のためか少し黄ばんだ元は白かったであろうページ。
そこには、まるで書きなぐったような荒い文字が書き記してあった。
ページいっぱいに大きな字で、数文字の短いサイン。
「………やっぱり、…これは………」
「これサロナ様のご友人様の日記でしょうか?
えーと…………………、
……すみません、見ませんから、もう見ませんからそんなに睨まないでください」
後ろからひょっこりとのぞき見しているジョージを一睨みすると、聞き分けの良い部下は回れ右をした。
それを見届けてもう一度、視線を落とす。
荒々しいというか、ただ汚いというか……、乱暴に綴ってあるその文字をそっと指でなぞった。
こんな文字、読まなくても把握できた。
この癖のある乱暴な文字を書くのは……あいつしかいない。
事実、その文字は書き手の人物を確信させるものだった。
眺めていると自然に、憎らしいような、微笑ましいような…だが少女らしくはない笑みが零れた。
――――ティル
…………ティル、
………ティル、
……ティル…………。
長年口にしていないその短い名前を、無意識に何度も何度も呼んでいた。
心の中で、何度も……。



