「……これ?」

「うん、それ」

「俺のためにくれる本ってこれ?!」



明らかに嫌そうな顔のレオナ。


ソフィアに怒られるとかそんなの関係ねぇ、みたいな勢いだ。



「うん、なんか役に立つんじゃないかな〜と思って」



そんなレオナに本人は涼しい顔。

おまけに眼鏡を白衣の端で丁寧に拭いている。



「〜〜〜〜っムキーーーーー!!
もういい、行ってくる!!」



意味不明な奇声を発し、家から出ようとドアに手をかけた。

だが、その場の雰囲気にそぐわないソフィアの真剣な声色で手を止める。



「家に寄りな。
……最後に掃除でもしていきなよ」



先程とかわらず白衣の端で眼鏡を拭きながら言う。

目線もあっち。


だが、顔も声も…はいつもより真面目だった。



「…二人共待ってるし、行かない」



聞く耳もたず。


レオナはプイッとそっぽを向いた。


それに呆れたように溜息をつくソフィア。



「あ、そう…。
じゃあ行ってらっしゃい」

「…ぅ〜〜〜〜ん……」



曖昧な返事をしながらレオナは外へ出て行った。















「ったく……、まだガキなんだから…」



眼鏡を拭く手をとめ、椅子に腰かけた。


レオナがいなくなった今、部屋にソフィアは一人だ。


やけに時計の針の音が大きく感じる。


一人の部屋はこんなに広かったのか、と改めて実感し、あいつのいなくなった部屋をボーッと眺めた。