ゴッドネス・ティア

止血騒動の後、何故この家にジョージがいたのかと聞くと「私の仕事はサロナ様を守るためてございます。いかなるときもお傍を離れたくございません」と大まじめに意見して来たのだが、それは大いにストーカー行為だ。


そのおかげでジョージには申し訳ないが本の雨を浴びずに済んだのだったが、これからは気配に気をつけるように辺りに集中しようと反省した。








そして、…………何故だろう。


こんな時に……、



こんな集中力が切れに切れた時に何故………






























「サロナ様〜この本はかなりの年代物ですね。
ここのお宅サロナ様の亡くなられたご友人様のお家なのでしょう?
素晴らしいご趣味をお持ちで……さすがサロナ様っ!良いご友人を…!」



赤茶の革表紙にかかった何年物の埃を手で叩き、それを高々と持ち上げる血濡れのジョージ。


打撲や痣が目立つ割には、いつも以上に機敏な動きをしているようにも見えないこともない。



まるでキラキラ輝く、目が飛び出そうなくらいの高額な宝石を見ているような目の部下を、大きく目を見開いて見上げた。


……いや、ジョージを見ているわけではない。



サロナの視線の先は………
























「ジョージ、その本を三秒以内に寄越さないとおまえのナニを潰す」


「…………………」






言葉の意味が通じたのかそうでないのか、だがいつもなら騒ぎ立てるジョージが顔面蒼白で、大人しくきっかり三秒で丁寧に渡して来たので多分、いやきっと伝わったのだろう。


脅し半分で受け取ったそれを、そのつんと釣った目尻を更に釣らせ、真剣な面持ちで見た目より僅かにずしりとくる赤茶の表紙に手をかけた。


表紙には淵に細かい装飾の模様だけで、あとは何も書かれていない。


しっとりとした表紙のその年代物は、指を沿えるだけで指先に微かな汚れがついた。