ゴッドネス・ティア

「しかたない………」





数分待ったがジョージの血はとどまる傾向がない。


本当はハンカチでなんとかしたかったのだが、自分のドジのせいで使えない。


そろそろジョージも出血しすぎたのか、笑ってはいるがふらふらしているし……








……あんまりこの手は使いたくなかったのだが、





サロナはその漆黒の瞳をぎらつかせ、もうすでに視点が定まっていないジョージの猫っ毛を引っつかんで、こちらに引き寄せた。


痛い!とジョージが叫んだ気がするが、そこは無視。


両手でジョージの頭を包みこみ、こめかみの傷を間近で見てみる。


………これくらいの傷なら。




くん、と鼻で息を吸い、

その傷口を…………















舐めた。












「ササササササササササ……ササササロナ様なななにを〜〜!?」


「ん〜?見てわかんない?」



ぺろり、ジョージのこめかみを生暖かな舌が這う。
ゾワッと嫌ではない鳥肌が立った。

サロナには見えていないがジョージの頬は林檎に負けぬほど真っ赤。




「いや、あのですね、あのですねー?」


「ごたごたうっさい。
しょうがないでしょ、うちの村には病院とかないし、応急処置するようなもんもないんだ。
これで我慢して」


「いやそういうわけでなく、」



びりびりびりーッ



今度はなんだ、とサロナを見れば、


……我がご主人様は己の上着の袖を歯で破いていらっしゃった。



「サロナさまぁぁあ!!
やめてくださいぃい!!」


「泣くな喚くな!
ほら、こうやって………」



ぎゅ、と頭に締め付けられるような感覚。

なんだなんだと触れてみれば傷を主に鉢巻きのように無造作に巻き付けられている黒い布。



「………え、これは?」


「んーたぶん止血ってやつ。
やったことないからわかんないけど、多分あってる」