ゴッドネス・ティア

だんだんと表情が暗くなっていくサロナ。


魔女であり、長であるサロナ。


炎をうみだし、

地をえぐり、

風を踊らせ、

雨を降らし、

空気を凍らせ、

人を闇に葬った。



殺した、たくさん。

いろんな物を壊して来た。


魔術でなんでもできたのに、



今は一人の部下の傷を癒してやることもできない。












「………くそッ」



悔しい。

歯がゆい、むかつく。


こんなにも自分は無力だ。

そんなこと、わかってた。


あいつが……いつも言ってたから。





……あいつを思い出すと妙に腹が立つ。

もうこの世にはいないのに、

自分の、この手で葬ったのに。



サロナはその薄紅色の唇を強く噛んだ。





「ちょ…ッサロナ様!
そんな苦々しい痛々しい顔しなくてもたかが本じゃないですか…!
いつもよりいっそう険しい顔付きになってますよ?
そんなに眉間にシワ寄せてたらシワのこりますよ?」


「………チッ」


「いやいや、そんな毒々しい舌打ちいりませんよ。
なんですか?どうしてそんなに機嫌悪いんですかー?!」


「……うるさいジョージ。
ちょっと昔を思い出しただけだよ」



そう、昔。

昔のことなんだ。


昔のことなのに………
















なんなんだこの胸騒ぎは……