ゴッドネス・ティア

「えへへ…やってやりましたよ、本からサロナ様を守ってやりましたよっ」


「阿呆か!なんで庇ったりするんだ!
ああああッ、あたしは巫女じゃないんだから治療術は使えないんだよ〜!」



とまりそうにない血をあたふたと手で押さえながら、何か巻くものがないかと辺りを見渡すが、壁から落下してきた大量の本が散らばっているだけで、探す気にもなれない。


スカートの隠しポケットにしまっているはずのハンカチを取り出そうとするが…………、こういうときに限って何故ドジをかましてしまうのだろう、いつもは使わない時でも入っているこれまた黒いハンカチがどこにも見当たらない。





「…………ジョージ、ごめん。あたしを今度からドジ王と呼んでいいよ」


「……ドジ王ですか?
さすがサロナ様!カッコイイですね!」


「え、……そう?」



そこで褒めるジョージもジョージなのだが、何故か照れているサロナにはもう言葉が見つからない。


そうこうしているうちにもジョージのこめかみからダラダラとおびただしい量の血が流れ出しており、サロナも緊張感を取り戻した。



ふと、床にだらりと垂れているジョージの手の項を見れば、青ジミを通り越して黒ジミになっている。


本の落下をもろにうけた背中なんかはもっと酷いのだろう。



「サ、サロナ様!そんな深刻そうな顔なさらずに!
僕なら……ほら!ほーらほらほら!
こーんなに元気でッ痛い!!!」


「ほらみろ!何が大丈夫よ!」



だんだんと深刻そうな表情になっていくサロナを気にしてか、ジョージは空元気というのが似合いそうな程明るい笑顔で両腕を大きく回転させてみせたが、どうも痛かったらしい。


結局血がさらに流れだし、ジョージの精一杯の行動は無意味となった。