ゴッドネス・ティア

壁一面の大量の本が、重量に逆らうことなく一斉に床に落下。


もちろんそれは床に座り込んでいる小さなサロナにも向かっているわけで、彼女は大量の本を避けることもできず、ただ両手で頭を庇うことしかできなかった。










だが、痛みはいつになってもやってこない。


痛みは来ないが、ドサドサと本の落下する痛々しい音は耳元で聞こえる。


運よく本が自分を避けてくれたのだろうか……、と恐る恐る閉じている目を開け、顔を上げた。



だが、丸めた背中が妙に温かいことに気付く。



「ぁいたたた…ッ」



耳元で囁くような悲痛な声が響いた。


聞き覚えのある声にぎょっとして、振り向く。







………この声は、














「ジョ、ジョージ?!」



そこには、サロナに覆いかぶさるような体制ではにかんでいる彼女の助手兼部下、ジョージ・ブラウンがいた。



「あはは…サロナ様大丈夫ですか?」


「な、なんで……………、ッ?!」



直ぐさま起き上がり、恐らく自分のかわりに本の直撃をうけたであろうジョージを見上げ、肩を掴む。


だが、ヌルリとした生暖かい感触に驚きに目を剥いた。




ヌルリとした感触を感じ取った右手を見下ろすと、………真っ赤。


ジョージを見上げると、こめかみからダラダラと血が流れている。


それなのにジョージは誇らしげな表情で笑みを浮かべていた。