魔女の村のある家に、灯りがついていた。
この家に灯りがつくなど何十年ぶりだろうか。
それほど長い間、この家に人影はなかった。
やはり黒で統一された配色の外見のそのなかなか豪華な家のある一室に、何年ぶりかに出入りをする者がいた。
辺り一面、本の行列。
壁には端から端まで、床から天井まで、びっしりと本が隙間なく並べられている。
あちらこちらに机や椅子があり、また床には無造作に書類のようなものがバラバラに散らばっていた。
書物はきちんと片付けてあるのに、床が混雑しているのは、今その机に偉そうに居座っている彼女が原因なのだろうか。
彼女は久しぶりにかつての友人宅に不法侵入していた。
不法侵入というと感じが悪いが、この家の主人はもういない。
なので彼女は自由に出入りをしていた。
いや、今初めてかつての友人の家に不法侵入したのだ。
友人がいなくなって約30年……、彼女は友人の家に入ろうとしなかった。
それが何故今、友人の椅子に居座っているのかというと…、
この書庫に秘密があるではないかと考えたサロナ・ダークは、椅子の上で胡座をかきながら膝の上で分厚い書物を睨むように眺めていた。
机の上には今まで彼女が読んだのであろう書物が山積みになっており、すでに彼女の背を追い越している。
本をあさるように読みだしてから、かれこれ三日………、体力には自信のある彼女にも限界というものがきていた。



