バンダナを掴む腕は14歳とは思えない程白く、細い。

その腕の持ち主を確かめた後、香月は一息ついて彼女の名前を呟いた。



「…シャラン」



シャランは焦げ茶色の大きな瞳を香月に向けている。

掴んでいるバンダナを優しく離し、首を少し傾けた。


その弾みでいつも被っている白いブカブカの帽子が揺れる。
角が少し尖っていて猫耳帽子にも見える。


帽子の端から二つに結わえた白い髪がサラリと出ていてかわいらしい。



「どうした?」


「雨、強い…危ないです…」



少し低い透き通るような声と重なって、ザーッという雨の音が聞こえる。

外はもう大雨だ。


シャランは不安げに香月を見る。

年齢のわりに145センチと小柄なのでどうしても見上げる体制になってしまう。



「だが、先に進まなければならない…。
あの男がいつ、何をするか分からないからないから…」


「…橋まであとどれくらいですか?」


「橋?ああ…もうすぐだよ。もう着く頃じゃないか?」



そう言って窓から外を見ようと立ち上がった瞬間…



















ムアオ〜〜〜〜ッ!!!


馬のムンマの鳴き声と同時に馬車が激しく傾いた。

倒れはしなかったもののバランスを崩した香月は頭を壁に激突させる。


声にならない激しい痛みに涙腺が緩み涙が出そうになった。



「わあ、びっくりしたー…ムンマの鳴き声がしたけど橋についたのかなあ?」



まだ、痛みから立ち直れない香月を踏み付け、窓に駆け寄るリュンマ。



「ムンマ〜!!ついたの?」



ムアッォオムア〜〜!!!


リュンマがムンマにむかって声をかけるが苦しそうな悲鳴が返ってくるだけであった。

ムンマの様子に疑問を持ち、背後のル・メイは眉をひそめる。



「…何か、様子がおかしくないですか?」



リュンマの隣を擦り抜け、恐る恐るドアの間から外を覗いた。




















その瞬間、ル・メイは言葉を失った。