ゴッドネス・ティア

頭上に見える『何か』に気付いたレオナはスッと目を細めた。


今からその『何か』が何をするかなんてわかってる。


いつもみたいにあーんなことするんだな、と半場呆れ気味に見上げる。


そして、その『何か』の手がニュッと母の肩にのびた。










「アメリス!!!」


「!!?」



やっぱり、とレオナは子供にしては生意気な乾いた笑みを見せる。


男にしては細いがたくましいその腕はやはり母アメリス……いや、妻アメリスをきつく抱きしめていた。


抱きしめた勢いで男の柔らかな茶髪が宙に舞い、母の白い頬に触れた。


一方母の方は驚いたのかそうではないのか…、目をパチクリとさせ、うんともすんとも声を発しない。


まあきっと驚きすぎて思考回路が停止しているのだろう。



「ただいま!帰ってきたぞ!驚いただろー!!
…あれ?驚きすぎて声もでないか?!おーいアメリスしっかりしろー!
あれ、レオナいたのか!相変わらずかわいいなおまえは〜!
パパが帰って来たぞー?ほらっお土産もあるぞ!
そんな細い目しないで俺からの愛の抱擁をうけるがいい!
あっはっはっはっは!!」



素晴らしきマシンガントーク。

ペチャクチャと早口で喋っていた父クラウスは、満面の笑みで次は息子であるレオナに腕を広げた。


力強い腕で母そっくりの髪を持つ小さな息子をひしと抱きしめる。


呆れたように見ていたレオナだが、いつもと変わらない家族バカっぷりの父を見て嬉しそうに満面の笑みを見せた。


しばらく放心していたアメリスはハッと我にかえり首をブンブンと振る。


そして、ギューッと窒息させるのではないかと疑いたくなる程強く息子を抱きしめる愛する夫を眺め、顔を綻ばせた。






「……お帰りなさい」