ゴッドネス・ティア

「じゃあレオナはジャン君のこと嫌いなの?」



大きな二重の目をぱちぱちと数回瞬きしながらの母の質問。

母は今まで息子の話を聞いていなかったのだろうか…?


眉間にシワを寄せていたレオナの顔が更に歪む。



「あったりまえじゃん!
ジャンなんて大っ嫌いだよ!!」



そう、嫌い。

面と向かってはごたごたするから言わないが、

大嫌いだ。



「だってこの髪馬鹿にするんだよ!!
お母さんは悔しくないの?!」



この髪にはいろいろな思い入れがある。

それに大好きな母とお揃いの赤い髪だ。

ジャンにとやかく言われる必要はない。



「んー………」



母はその形のいい唇をつんと尖らせ、首を捻る。

今この場に父がいたらその唇に今にも吸い付いてるのではないだろうか。


…………父さんがいなくてよかった。


父さんがいるといつも調子が狂うというか……、話がそれるから。


そんな父を愛する少女のように純粋な母は、尖らせた唇を解き、

ほにゃんと笑みを零した。



「んーと、お母さんにはよくわかんないや。

お母さんはこの髪の色が好きだけど、ジャン君は赤が嫌いなのかもしれないし。
べつにお母さんはどーってことないよ」


「……………え…」



母はこの憎らしきがき大将の悪口にのってくれるかと思っていたのに…

だって、誰だって自分の物を馬鹿にされたら嫌でしょ?

もしかして、この母に同意を求めた自分が馬鹿なのだったかもしれないが…。


そう自己解決しても、味方だと思っていた母と意見が食い違ったことは、この小さな胸に大きなショックを与えた。


落ち込んではいけないとわかっていても、どうしてもあからさまに肩を落としてしまう。