ゴッドネス・ティア

「そやつに次指一本でも触れてみろ………
あたしの力全てを使ってでも、おまえを殺す」



そのサロナの言葉は…今まで以上に真剣なものであった。


少女とは思えない…凄みのある声に、さすがのスーも動けないようだ。

スーはまるで苦虫を噛むんだような表情をした後、背中に垂れているマントを翻し、一つ舌打ちした。



「この人数に俺一人では…部が悪い。
今日は退散させてもらうとしよう」

「な、なに!?」



スーの退散宣告を聞くと、ジッと黙っていた華蓮が声を荒げた。



「おまえは極秘で逮捕令状が出てんだッ!!
いまさら逃げんなぁ!!」

「……そんなこと俺の知った事ではない」



華蓮の発言を華麗に受け流し、口元についた血を指で拭った。

その指についた血もぺろりと舐めとる。



「くそっ…逃がすな!!」



マントを翻し、これから退散しようかとするスーに華蓮とル・メイ、さらにシャランや香月、リュンマが彼を止めにかかった。


どうやら、これも彼女達の仕事らしい。


だが、スーはこれまた華麗に避けて広場の隅に逃げ去る。


そして、彼独特の不敵な笑みを浮かべる。



「では、さらグァッ!!」

「おーっと、ごめんよ兄ちゃん」



……何がしたいのかわからないが、側にいたリンが勢いよくスーにぶつかった。


そのせいで去り際のセリフが遮られ、……なんとも格好悪いスー。



「……チッ…おまえは何がしたいんだ…」

「いやー、兄さんこんなとこいると通行の邪魔だよ。
ちゃーんとまわりをみなきゃ」

「なにを…ッ………くそッ」



あまりに緊張感のないリンがへらへらとスーを笑い飛ばす。

スーが不満げに何か言いかけたが、サロナの氷柱を見て、言い争っている場合ではないと判断したらしい。


即座にリンから離れ、ある一つの大木の太い枝へ移る。



そしてマントを翻すと、その風にのってだんだんと様々な風が集まってきた。


木の葉や、細い木の枝、砂埃を交えてスーを包んでいく。