ゴッドネス・ティア

先程まで右手に握っていた武器が、……ない。


スーは剣を交えたときの衝撃で痺れる右手を見つめたまま、しばらくつったっていた。


視線だけで主人の元へ帰っていった武器を見て、もう一度自分の右手に視線を戻す。


そして、その原因である者……レオナに視線を向けた。


レオナは…スーと目が合い、どうしていいかわからず、とりあえず苦笑いを浮かべた。


瞬間、スーの表情は恐ろしいくらい険しくなった。


丸腰にも関わらず、じりじりとゆっくりレオナに歩み寄ってくる。


予想外のスーの行動にまわりはぎょっと目を見開いた。

もちろんレオナも、歩み寄ってくる敵を見てジッとはしていられない。


スーと一定の距離を保つ為に同じ速度で後ずさる。


だが、敵のほうもどんどんと速度をあげてきた。

こちらも焦りながらも後ずさるが、……背中に何かあたった。


ここは森。
真後ろに大木があるのは自然現象であって…否定はできない。


スーは更に速度を上げ、ずんずんと距離を縮めていた。


あちらは丸腰、こちらには剣がある。

迫ってくるなら切ればいい。


……だが、

スーから放たれる、なにか…気迫のようなものがそれを許さない。



―――怖ぇ……。



気付かぬうちに冷汗が流れてきた。

こっちがわが有利なはずなのに…、


なんなんだ…!!





スーはもう目前に迫っていた。

まわりで見ている皆もそのスーの気迫に圧されてか、ピクリとも動かない。


スーが…、

目の前で止まった。