ゴッドネス・ティア

「おまえさ…何がしたいの?」



さっぱりわからない。

何故スーがいきなり自分を狙ってきたのか、何故こんなに狂っているのか…。


だが、確かにわかるのは…こいつが自分に狂う程の憎悪があることだ。

この凄まじい憎悪は、全て自分に…レオナ・オラトーレに向けられている。


スーはその暗い瞳をカッと見開き、唇を噛み締めた。



「……レオナ…オラトーレ……!!」



何度めかの自分のフルネーム。

その名前に、ありったけの怨み、辛み、憎しみをこめて。



「レオナ……!
…おまえさえいなければ……ッ!!」

「…!?」



スーはそう呟くと、一度レオナから離れた。


ギチギチと火花を散らす剣の間合いが一旦開くと、一息もせずに新たに切り掛かって来た。

剣と剣は再びぶつかり合い、地に火花が舞い落ちる。


だが、レオナの頭には先程のスーの言葉が木霊していた。


―――俺はこいつに何かしたっけ…?……思い当たる節は……ないとは思うが…。


血の石を巡り、争った…までとはいかないが、そのときに……フードの男にタックルした後ヒールで踏み付けたような気がする。


………今更になってのしかかってくる妙な罪悪感…。



「いやぁッ、あのヒールはさぁっいろいろと事情があってさぁ…!」



言い訳をするのはかっこよくないが、ここで罪を認めるわけにもいかないので、冷汗を浮かべながら苦笑いをつくる。


だが、スーは顔をしかめると不思議そうに首を傾げた。



「……ヒールだと?
………なんのことだ」

「あれー…?」



被害者は身に覚えがないらしい。

なら話は別だ。


こちらにもそのヒール以外身に覚えはない。


自分は何をそんなに怨まれているのだろうか?