ゴッドネス・ティア

目の前には…銀に光り交わる剣と、驚愕の表情に変化する狂気なる顔。


だが、その表情はすぐに崩れ、憎悪が混じる。


剣を挟んですぐあるそれに、レオナは顔をしかめた。



「………おまえ…スーか?」



見覚えのある顔。

だが、その顔は前会った落ち着いた…いや、冷酷な表情とは違う。

変わりないといったら、…あの暗い暗い瞳くらいだ。



「………レオナ…オラトーレ…」



スーはレオナの名を聞き取れるか取れないかぐらいの掠れ声で呟くと、急に自身の剣に力をこめた。



「ぐッ…………!」



男にしては痩せ型で、筋肉のなさそうなスーのどこにこんな力があるというのだろうか。


足元の地面に、圧されてできた引きずったような跡がのこる。



「レオナ…!何してんですか?!」

「……ッ!?」



背後から聞き慣れた甲高い声がした。


間違いないこのあいつ独特の細い声。


……今来られると非常にまずい。



「ヒサノッ今出てくんな!!」



どうかこのまま退いてくれと切に願って彼女に言った。


……だが、彼女はそうそう空気の読める奴ではない…。



「なーに言ってんですか!私が出て行ったら誰が皆を治療するんですかー?!」



はい、こういう奴とはわかってました。

わかってたけど…どうしてもこれは譲れない。



「…チッ!スノーリア!!
こいつの狙いは俺だ!!
ヒサノとリン…あとアランを守ってくれ!!」

「……………」



ヒサノに言ってもダメだと理解し、頼りになるスノーリアに懇願する。

国王騎士は、…自分達でなんとかするだろう。


スノーリアは無言で頷き、暴れるヒサノと全く緊張していないのか首をコキコキと回すリンを連れ、アランをリュンマから引きはがした。