ゴッドネス・ティア

「ル・メイ…!ちょーっとは抑えろよ!!」

「………は?何?なんか文句あんの?
別に殺気だけで死ぬわけじゃないんだから……相手だって…まだ余裕釈々な笑顔だよ……」

「…………あらまぁ…」




ル・メイの言うとおり、スーはまだまだ余裕だと言うような笑みを浮かべていた。


なんだこの余裕ぶりは……釈に触る…。



「……俺をナメるなよ…?そっちの剣士の女も本気を出せ……腹が立つ」

「……はっ!
………おまえごときにオレが本気を出すとでも…?」



華蓮のその皮肉な言い草にスーは笑みを消し、目に見えそうなほどの殺気を放ちだした。


ざわざわと木々はざわめき、髪が頬を撫でる。



両者の殺気がぶつかり合い、挟まれているサロナはなんとも言えない圧迫感にさいなまれた。


二つに結んだ漆黒の長い髪が怪しく揺れ、なぜか我が二つの髪を掴むという意味不明な行動をとる。










………こーりゃ、ヤバイ。


なかなか見れないな…こんな死闘は…


……十年前の…あの醜い争いを思い出す…。




…ここで暴れてもらっちゃ三人とも女神様の大事な大事なお墓を壊しかねないな……


………………あッ?







………なんだ、あたしの助太刀いらないっぽいなぁ…


じゃあ、あたしはここまで………








サロナは、瞼を伏せ、小さく微笑んだ。


その笑みは少女の笑みではなく……


何十年、何百年と生きてきたような…妖艶な微笑みだった。





地面に転がったギョルロッドを拾い、


闘いから、一歩、身を退いた……












そのとき、草を掻き分けるような音がした。


その瞬間……





閃光が前方を横切った。