「…何故知っているかという顔をしているのでしょうね」



ファンはクスリと笑って話を続けた。



「あなたの父は有名でしたからね。
ま、そんなことよりレオナは大丈夫と…」



なんだか、勝手に話を流され、進んでいる。



「何が大丈夫なんだよ!
ちゃんと説明をっ…グブベっ!!」



ヒサノに肘で鳩尾をヒットされた。

悲痛な呻きが口からもれる。



「では、…アランは武術や剣術など、なにか経験がありますか?」



今まで、レオナを向いていた視線がアランへ移動する。

目の悪い人とは思えない。



「僕?!…えーっと…。
弓が多少できますけど…」

「えぇ?!おまえ弓なんかできたの?!
初耳だ!!」



アランはまだ11才。

体もまだしっかりと出来ておらず、小柄で華奢。


とても弓ができそうには思えない。



「できるよ、僕のお父さんは弓使いだったからね…。
小さい頃、よく教えてもらってたんだ。」



遠くを見るような目でに答えた。


その横顔はひどく寂しそうだ。


レオナはハッとし、口をつぐんだ。


アランの父は五年くらい前に事故で死んだんだった…。


母もアランが幼い頃に病死しており、独り身のアランは仲の良かった近所のおばさんに引き取られたのだ。


父の事はアランにとって触れられたくない事だと思う。


レオナは謝るかわりにアランの小さな頭をポンポンと撫でた。


キョトンとこちらを見上げてくるアラン。


しばらくすると本当に子供らしい笑みをこぼした。



「なぁに?レオナ。変なの〜」

「うるせぇ、変じゃねーよ」



アランの言葉にムッと顔をしかめる。


その顔にアランはクスクスと笑い始めた。


失礼な奴だ。