ガタンッ…ゴトンッ…



ふと、自分達愛用の馬車の窓から外を眺めると、辺りは青々と茂った森林。


もうこんな田舎まで来てしまったのだな、と一つ小さな溜息。


その表情はどこか嬉しそう。


目に垂れてきた自分の黄金色の流れる肩まで延ばした髪を自慢でもするようにサラリとはらう。


その髪の持ち主が女性だったらまだ許せたであろう。


絹を思わせる繊細な白い肌、碧い大きな瞳、スッとのびる鼻、小さな唇。


少女にも見えてしまうこの中性的な顔立ち。


それに比例するように、体型、身長も少女と言いたくなるような容姿だ。


しかし彼は生憎男だった。


だが、その後ろ姿は誰しも頷いてしまいそうな美しさ。


男でも襲われてしまうのではないか、と心配になる。


そんな彼が森林浴なみの感情に浸っていると、後ろから聞き慣れた声が。



「おーいおいおい、ウィル!!」



この聞き慣れて聞き慣れて、もう聞き慣れすぎたくらい耳に残る、聞く人によってははうざ…ゴホンッ暑苦しくなる程の陽気な声。


顔を歪めて、声の持ち主を振り返り、いつものように一睨み。



「なに、…レイ」


「ん〜、とくに用はないんだけどな、ウィルが暇そうだったから話しかけてやった♪」



そう満面の笑みで感謝しろよ☆と親指をピンッと起てる彼…レイに殺意が込み上がるのは自分の心が狭いからだろうか?


そんなはずはない、だって実際うざいと思うだろう、誰でも。


平均の女子より身長の低い自分を余裕げに見下ろす巨人の天パを更に睨んでやった。