ゴッドネス・ティア

「それで、なんでヒサノはキレてるんだ?」



またか、というように深い溜息をついて馬車に乗り込んでくるレオナ。

ミュウという変な生き物のつむじから出ている水からとったのか、水筒からはたぷん、と水がたっぷり入った音が聞こえる。

正直飲みたくない。


スノーリアも続いて馬車へ乗り込もうとするが、ミュウが今だ水を放出しているため、馬車が濡れると国王騎士に制された。



「レオナ、聞いてください!この人ったら嫌な根性してるんですよ!」


「…………うん、それで?」


「何か言ってやって下さいよ!」


「……わかったから、叫ぶな喚くな…」



キンキンとヒサノの高い声は耳に痛い。

そんな声で耳元で叫ばれるとこっちはたまらない。


とりあえずヒサノを鎮めようと、軽く肩を叩いてやる。

そして、視線を同じ目線の女性に移した。

こんにゃろ背ぇ高いな…、と悔しそうに内心呟きながら、余裕しゃくしゃくで髪をクルクルといじっている女性を見据える。

黙って見ていると目が合い、女性は「何か用?」とニコリ。と微笑んだ。
まるでニコリ。の"。"も聞こえるんじゃないかってくらい綺麗に。


こんな美人に見つめられたら、ヒサノの整った顔なんて平々凡々に見える。



「……えーーー……………………おはようございます」


「あ、はい。どーもおはようございますー」



話題が見つからず、とりあえず挨拶。

そんなヘタレなレオナに回りはがっくりとうなだれたとか。