巫女に案内してもらい、ファンがいるという祈りの場に着いた。

なんの躊躇もなくテンポよくノックする巫女。


ドアが開かれると右と左に巫女の行列がずらりと並んでいた。


いくつもの視線がレオナ達に注がれ、視線が痛いとかはこういうことかと実感した瞬間だった。


巫女達の奥に白い椅子に腰をかけて微笑んでいる女性が見えた。


床につきそうな程の長い天然の巻き髪が印象に残る。


あの髪はストレートにしたら絶対床に付くな…などどうでもいいようなことを考えるレオナ。



「…ファン様……」



隣にいるヒサノが目を輝かせて女性の名を呟いた。



「あぁ…、あれがファン様?凄いな」



レオナがそう呟くとヒサノの冷たい視線が向いた。


……恐ろしいことにバッチリと目があってしまった!



「『あれ』…?ファン様のこと『あれ』とおっしゃいました?
私少し耳が遠くてよく聞こえなかったみたいなんですけど…」



……ヒサノのキャラが一変したっぽい。


鋭い目つきでフフフ…と笑っているが目が…目だけは笑っていなかった。


額に冷や汗が流れる。


あれ?おかしいな、もう夏も終わり頃なんだけどな〜…と心で呟き、平常心を保ち続けるのにも精一杯。



「レオナ!ヒサノの前でファンの悪口はダメだよ!
『裏のヒサノ』が出て来ちゃうからやめてよ!」



アランが小声で耳打ちした。



「なんで、おまえがそんなこと知ってんの!?」

「え?あのさっき案内してもらった巫女に教えてもらった」

「はいぃぃい?!」



俺は聞いてねぇぞ!!と巫女に文句を言ってやろうとと思ったが、すでに巫女は右側の行列にまざっていて、忽然と姿を消していた。


…今までにない舌打ちを心の内側で鳴らしてやった。