「…そろそろお目覚めだぞ」



伏せていた瞼を上げて、ボソリと呟く。



「え…?」


「ほら………来る」















バサッ!!



隣にいた女性の布団が激しく舞い上がったかと思ったら、中から何かのびてきた。

それはターゲットをすばやくわしずかみ、ひきよせる。



「きゃっ…!!」


「ヒサノっ!!」


「動くなっ!!!」



女性はどこから持ってきたのか、引き寄せたヒサノの喉元にナイフをあてた。

ヒサノは小さく悲鳴をあげる。



「はぁ…はぁ…、なんだあんた等…」


「あ!あなた大丈夫ですか?
息切れ酷いじゃないですか!!」



………喉元にナイフをあてられているというのに自分より女性の心配をするヒサノ。
なんて緊張感のない奴だ。

こういうときのまでお人よしなのは困る。



「ま、待て、落ち着け!話して分かち合おう!」


「な、何故あたしはここにいる…?」



頭の混乱したレオナが自分でもよくわかっていない言葉を口走ると、女性は不思議そうに馬車内を見渡す。



「あなたはケルサニオスで倒れていたんです。
それを見つけた私たちがあなたをここへ運んだんです」



ヒサノが早口で説明すると、女性は苦しそうに胸を抑える。



「はぁっはぁっ…そうだったのか…、それは迷惑をかけたね…」


「いいえ、それより早く横になってください。
汗すごいですよ」


「あ、あぁりがと………」



女性はそこまで言うとナイフを落として、眠りについてしまった。