ゴッドネス・ティア

女性の耳を見るとなんと、自分達と同じように耳が尖っていなかったのである。

それは美しく曲線を描いて規則正しく丸い。


まるで人間のようだと皆思うが、今度はまた一斉に口をあんぐりとあけた。



「人間…!?」


「ああ、人間だ」



すると、背後から低い凄みのある声が聞こえた。



「ぎゃーーーっ!!」


「そんなに驚くこともなかろう…」



音もなく現れたスノーリアに皆一斉に悲鳴をあげた。

こればかりは国王騎士もである。


本を片手に眼鏡のスノーリアに、何か違う雰囲気が漂っている。



「な、なんだスノーリアか…」



ホッとレオナが胸を撫で下ろすと、皆もホッと息をついた。



「その女は間違いなく人間だ。その耳が動かぬ証拠だろう」


「ま、マジかよー……」


「…………………そやつを本当に助けてもよかったのか?」


「………え……?」



エルフの国リリオと、人間の国ヒュネットは約十年前に大戦争をおこしており、その際負けたヒュネットはリリオの中で負け犬と呼ばれ、差別が酷かった。

それはヒュネット側からしても同じで、エルフがヒュネットで発見されればたちまち捕らえられ、打ち首にでもなりそうな勢いだ。


それほど両国の関係は険悪なのだ。



「助けてよかったと思うのは当たり前だけど…、国王騎士は…?」



国王騎士は戦時中に兵隊と共に派遣された。

直に戦った相手を助けることなどできるだろうか…。