ゴッドネス・ティア

首に刺さった。






かと思ったが、スーは間一髪で首をひねり、ナイフを避けていた。

ナイフは首ではなく、肩に深く刺さっている。



「………チッ!!」



スーのこめかみに深く青筋が浮かんだ。

力任せに剣で根を引きはがす。



「殺すっ!!!」



スーは一本の根に剣を突き刺し、森に響き渡るような声で叫んだ。

狂ったような叫び声と共にスーの中で何か異変が起きようとしていた。


それに素早く気付いたサロナは眉間にシワを寄せる。


スーの中から強い、強い……だが不安定な力を感じた。

しかも知っている…この力は……



「ル・メイ!戻ってこい!!」


「え…?」



スーに絡まった根の傍にいるル・メイが不思議そうに顔をあげた。



「ちょっと待って…」


「殺す殺す殺す殺す殺す」



よくわからないがとりあえず戻ろうとサロナを向いたが、頭上から不気味なしゃがれ声が聞こえた。

なんとも物騒なことを口走るその表情は、恨みと憎しみと…怒り。


ル・メイはその恐ろしい表情に背筋が凍り、顔を強張らせた。



「死ね死ね死ね死ね死ね…」



…目があった。

ああ、なんて悲しい目なんだろう。


哀れで、暗く、恐ろしい目…。



「まず、オマエからだ」



そう言うと、右手で拳を握り、ル・メイへ向ける。

ざわざわと木々がざわめいた。


奴の心情のようだ。


風が、何か大きな力が、スーの拳へと集まってくる。

術には無頓着なル・メイでもそれはわかった。