ゴッドネス・ティア

そして、ヒサノのイライラの矛先はいつも他人へ向く。



「スノーリアさん、女の子いじめたらいけませんよ！」



「私はいじめたのだろうか…」



いつもは表情の乏しい（陰気臭い）スノーリアが珍しく焦りの表情を浮かべる。


もんもんと考えていると、肩にポンッと優しく手を置かれた。


明るい橙色の髪が眩しく思える。



「あいつはいつも意味のわからんところで『助けてぇ』とか『怖いぃ』とか使うから…気にすんな！」



そしてフッと笑みを作る。元気出せ、とでも言うように…


それ以降、スノーリアは一段と表情が乏しく（陰気臭く）なったとか…




















「もう、まったく…なんで僕がこんなことしなくちゃいけないんだよ…」



向こうの方で会話が盛り上がっている中、アランは、まだこんこんと眠り続けている白髪の少女の見張りを任されていた。


少女の痛々しい傷をそっとハンカチで拭ってやると同時に向こうからドッと歓声が上がった。


イライラしながら振り向くとリュンマとかいう女を中心に皆がワイワイと会話に花を咲かせていた。


その歓声や表情を見ていると更にイライラしてきたのでプンッと体ごと目をそらした。


そして、また視界に入るのは痛々しい少女と傷…、年齢は自分と同じくらいかそれ以上というかんじだ。


猫耳みたいな淡い桃色帽子が特徴的で、そこから覗く白髪は、絹のような、という例えが一番わかりやすい程柔らかい。


その髪となんらかわりない色の肌は、太陽の陽を知らないんじゃないかと疑いたくなるくらい白く、喧嘩か事故か何か知らないが古傷がよく目立つ。


腕や足の所々に包帯が何十にもまいてあるから、きっとこの古傷より傷が深いのかと思うと、彼女の人生がどれだけ波瀾万丈だったのかと考えてしまう。