「紗彩。」

「お兄ちゃん………」

私はお兄ちゃんに駆け寄った。

「ごめんね。お兄ちゃん。」

「なんでお前が謝るんだよ。」

そう言うと、お兄ちゃんは私の頭をなでた。

怒ってる……私のこと恨んでる。

そう思ってたのに……お兄ちゃんは、優しい。


その夜、私が寝ているあいだにお兄ちゃんは静かに家を出ていった。

お兄ちゃんが出ていっても、お母さんは泣かなかった。

何も思わないのか……
か悲しくないのか………

いや、感情がないというより……
感情がでないよう涙を堪えているようだった。