その晩、様々な不安や焦燥感を胸に抱いたまま優実に毛布をかけ、鍵をかけると無言で帰宅した。
俯きながら、熱い何かが僕を纏う。
何故、優実があの時間帯に起きているのだろうか。
幻だということすら忘れて、深い眠りについた。

夢の中の優実は、まだ元気にはしゃいでいる。
枯れ葉の乾いた音をさくさくと足早に踏み、満面の笑顔をこちらに向けた。
『ねえ、もしも突然私がいなくなったらどうする?』
危ないから、と追い付くと、僕に抱き着いた優実がぽつりと言った。
『そんなことは、考えることも出来ないよ。』

けれど、優実は居なくなった。
今こうして、長い幻を見ているのは、せめてもの救いなのだろうか。
まだぼけた身体を起こして、ぬるくなった水を飲み干しすと、器官を通るのがよく解った。