壁にかかっている時計は、もう9時半を指していた。



大翔君がいつ頃来るのか知らされていない私は、ずっと落ち着かない。



「 はぁ……緊張する……っ」



つい無意識に心の声が漏れる。



それは、宙を舞って小さく消えていった。



――ピーンポーン。



いきなり鳴ったインターホンの音に、体がビクッと震える。



こういう時のちょっとした物音が心臓にすごく悪い……。



誰だろうとモニターを確認すると、胸の鼓動が早くなった。



大翔君……。



今の今まで、大翔君のことを考えていた私は、ドキドキしながら玄関に向かう。



――ガチャ。



ゆっくりとドアを開けると白シャツに黒のジャケットを羽織った大翔君が立っていた。



「おはよ、まりや」