「なんで、そういうことになんの?
まりやには両親いるんだし、一緒に住むとか意味わかんねーんだけど」
眉間にシワを寄せる俺に母さんは、慌てて笑顔を作る。
「まぁまぁ。そんな怖い顔しないで、イケメンが台無しよ?」
「真面目な話してんだよ。わかるようにちゃんと説明しろ」
誤魔化すように笑った母さんに詰め寄ると、反省の色はまったくなしで、ニコニコしながら説明を始めた。
「……で、まりやの両親が3ヶ月だけ出張する間、俺が一緒に住むと」
「そう! ナイスアイディアでしょ?」
「あのなぁ……いくら幼なじみだからって、8年も会ってなかったんだぞ。
しかも、あいつは俺のこと覚えてないし、そんなの見知らぬ奴と同じだろ。
それに俺じゃなくても、親戚とかいくらでも頼めるとこあるだろ。
2人だけで住むとか意味わかんねー」
「美奈ちゃんは、早くにご両親亡くしてるし、良輔さんはお母様健在だけど、海外旅行に出かけてていないの。
あの2人は若くして結婚してるから、頼れる人も少ないのよ。
だから、何とか力になってあげたいの! 一生のお願いよ、大翔!」
顔の前で手を合わせてお願いをしてくる母さんに、怒りを通りこして呆れるしかない。
「一生のお願いって普通は1回だけだろ。これで何回目だよ」
今までにも、数えきれないくらいこの手を使われてきた俺としては、もううんざり。
「じゃあ、うちで預かればいいんじゃねーの?
俺と2人きりより、母さん達もいれば、まりやだって安心して」

