「よーし、今日は解散! みんな、気を付けて帰れよ」
先生の声と同時に、タイミングよくチャイムが鳴り、鞄を持って立ち上がる。
「なぁ、大翔の家って今日が引っ越しだったよな?」
「えー? 松坂君の家行ってみたーい!」
両腕に女2人を絡ませて現れた光に、思わず眉間にシワが寄る。
「だから?」
「顔怖いし。いや、オレも手伝いに行こうかと」
「女連れてよくそんな台詞出てくるな、お前。
そんな気更々ないくせに」
睨み返す俺に「どんだけ信用ないの……」と、軽くショックを受けていた。
「とにかく、絶対に来るな……」
念押してさっさと教室を出た俺は、急いで家に向かう。
今までとは違う帰り道。
8年ぶりに通るこの道は、少しずつ様変わりをしていたけど、懐かしさを覚えた。
引っ越し業者の大きなトラックが2台停まったところ。
久しぶりに見るクリーム色の洋風の家は、何一つ変わっていなかった。

