お母さんは誰のこと言ってるんだろう……。
まったく覚えのない私は、考えても何も出てこない。
そんな私の反応に、お母さんは大きな目を瞬かせて首を傾げる。
「もしかして、まーちゃん覚えてないの?」
「ごめん。わからない」
正直に答えた私に、お母さんは困ったように手を頬に当てた。
「本当に忘れちゃったの? お隣に住んでたヒロ君のこと」
お隣の……ヒロ君……?
お母さんのその言葉にさらに首を傾げる。
お隣に住んでたのは大くんだよね。
ヒロ君なんて名前知らない……。
「お隣に住んでたのは、大くんだったでしょ?
やだなぁ、お母さんてば」
笑いとばす私に、お母さんは不思議そうな表情を浮かべる。

