向こうは私のことを知ってるみたいだけど、記憶をたどっても全然わからない。
声をかけてきた男の子も、私の微妙な反応に顔を引きつらせているように見える。
「だから、やめろって言ったんだ。
1年も前のこと覚えてるわけねーだろ。
1回しか会ったことないんだから」
その時、もう1人の男の子の声がして、そっちに目を向けた。
あ……、この人……。
驚いて目を見開いた私を彼は見上げる。
“クールビューティー”な王子様。
その言葉がすぐに頭に浮かんできた。
「えっ。もしかして、大翔のこと覚えてんの!?」
声も出せずに見ていた私は、ハッとする。
ヒロ……ト……君……?
それが彼の名前だということを初めて知る。
そういえば、女の子達がヒロ君って呼んでたっけ……。
徐々に蘇ってくる記憶。

