「お前だけのせいじゃないだろ。

俺だって、聞いてるだけで何もできなかったんだから」



瞼を伏せて下を向いて苦笑する俺。



祥吾は真顔で見つめていた。



ふと顔をあげて見つめると、持っている荷物を一旦廊下に下ろした祥吾が口を開く。



「ヒロがそんなこと言うなんて意外だよ。

絶対にお前のせいで、まりやが倒れたんだろって責められると思ってたから。

俺があいつに告白したこと怒ってんじゃないの?」



「……殴りたいほど、ムカついてるに決まってんだろ。

けど、俺が他の女や有紗に告白された時……まりやもこんな気持ちだったのかって気付いたら、何も言えなかった。

それに、お前が自分をさらけ出して本音吐いてるとこも初めて見て、正直驚いた」



今まで付き合ってきて、あんな祥吾を見たのは初めてだったから。



ははっと笑う祥吾は壁にもたれて、天井を仰ぎ見た。



「自分でもダッサー……って思ってるよ。

あんな形で言うつもりなんて全然なかったのに、まりやが近くにいるといつもペース乱されて、俺じゃいられなくなる。

小さい頃からずっとそうだった。
俺の思い通りになんて1つもならなくて、それが悔しくて何とかしたくて……。


焦ってそう思う分だけ、口からは裏返しなことばっかり出てきて、自分でも嫌になるばっかりだった。
ただ、俺に向けて笑ってくれたあの笑顔を見たいだけだったのに、全部が空回り」



天井を見ている祥吾が今どんな顔してるかなんて、俺にはわからない。



今までの自分を見つめ直して、素直に言葉を紡ぐ祥吾に自分でもわからない行動をとっていた。