「何かあった?」



付き合いがそれなりに長い光が、俺の機嫌が悪さに朝から気付いてたはずだ。



普通なら、機嫌悪い奴に話しかけようとする人間は少ないし、寄り付こうとしない。



でも、光は出会った頃から違ってた。



こいつがやたら騒いだりするのは、その場の空気をちゃんと見てるから。



ただのバカじゃないっていうのは、付き合ってくうちに気付いた。



器用なんだかお節介なんだか、わかりにくい奴でもあるけど。



「祥吾の奴がこっちに転校してきた本当の理由は、まりやだと思う」



「どういうこと? まりやちゃんが理由って、だってあいつ小さい頃イジメてたって。
……あ~、好きな子ほどイジメたくなるっていう典型的な裏返しタイプってことか。

言われてみれば、あいつの考えてることかなりわかりにくもんな。あれは、人生を損するタイプだ。

オレみたいに、気持ちよく生きれば楽なのにねぇ」



しみじみしながら言ってる光だけど、俺からしてみればこいつだって人生を損してるタイプだ。



「てことは、まさかあいつ……大翔からまりやちゃんを奪っちゃおう作戦とか企ててんじゃ……」



軽々しい口調に、真剣に話をしてるのをバカにされた気がして、今日もちょうどいい位置にお目見えしていた光のおでこをベチッと叩く。