どうしようもなく湧き上がってくる怒りの感情を必死に抑えこんで、2階に続く階段を上がりきると、我慢していた気持ちを爆発させるようにして、強く握った拳を壁に叩きつける。



ドンッ!と大きな音をたてた俺の後ろで、微かに体を震わせる気配を感じ取った。



首を少しだけ動かして横目に見ると、胸の前で両手を力いっぱい握ったまりやがいた。



「……大翔……君」



震える声で俺の名前を呼ぶまりやに、今は優しくできる余裕がなかった。



祥吾にも腹が立つけど、いちばん腹が立ったのは自分自身。



俺が帰ってくるのが遅くなったせいで、まりやを祥吾と2人きりにさせることになって、その結果がこれだ。



祥吾にまりやを泣かせるな、なんて言っておきながら、自分が泣かせてるなんて、何やってんだよ……。



自分への怒りで、まともに話し合いをすることなんてできない。



今、まりやの顔を見たら何もしない自信がない。



「……悪いけど、今は1人にしてくれ」



今できる精一杯の優しさでそれだけ言うと、振り向きもせずに自分の部屋の前に向かう。