「何のこと……?」
本当に何を言われてるのかわからない私は、そのまま聞き返す。
「そんな些細なことも忘れるくらい、ヒロしか見てないんだね。
小さい頃、俺のことを“祥くん”って呼んでたことも忘れてるなんて、ショックだな~」
言われて、小さい頃の記憶が蘇る。
確かに私は、彼のことを祥くんって呼んでた。
でも、そう呼んだ私に『気安く祥くんなんて呼ぶな。ちゃんと祥吾くんって呼べよ』って言われて、私は仲良しの意味で祥くんって呼びたかったのに、それを拒否したのは彼の方だった。
それを今言ったところで、素直に聞いてくれる人だとは思ってないから、結局何も言えないままになってしまう。
「まりやも……ヒロに近付いてくる軽い女の1人なら……よかったのに……。
いいこと教えてあげようか。ヒロがどんな中学時代を過ごしてたか知りたくない?」
知りたいくないと言えば嘘になる。
でも、そういう話は大翔君本人の口から直接聞きたいと思ったから、迷わず首を横に振る。
「も、もうすぐ大翔君が帰ってくるかもしれないし、ご飯の準備するから離してっ」
私の上に覆いかぶさるような形でソファに手をついていた谷山君から逃げ出そうと、両手で彼の体を押し戻すけど、全然動かない。

