「別にいいけどね。それはそうとさ、やっぱまりやって可愛いよね」
「は? 何言ってんだ」
祥吾につい目を向ける。
「本当のことしか言ってないけど。家追い出されてここに来た時に言ったじゃん。
まりやのこと欲しくなっちゃったかもって」
「……! お前……!」
「あれ? 冗談だと思ってた?
ヒロも小さい頃、俺がまりやのこと好きだったの気付いてたでしょ。
俺の初恋もまりやだよ。けど、あいつはヒロのことばっかりだったよね。いつだってさ。
俺が話しかけるたびにビクビクして、いっつも泣いてた。
ヒロが引っ越してから全く会わなくなって、それっきりだと思ってたんだけど。
こっちの高校にヒロが入学するって聞いて追いかけてきてよかったよ」
小さい頃に祥吾がまりやのこと好きだったのは気付いてたけど、それは昔の話だと思っていた。
こっちに転校してきてからは、そんな態度を一欠片だって見せてない。
こいつが転校してきた理由って、まさか……。
「そんな怖い顔しないでよ。ただ、小さい頃の好きって想いが再燃しちゃったみたいなんだよねー」
ちゃんと聞いてないと聞きこぼすような、そんな軽い流れで自分の気持ちを口に出す。
「お前……自分が何言ってるのかわかってんのか……」
「わかってるよー。だから、こうしてヒロに打ち明けたんじゃん。
悠長にしてた俺が悪いんだけど、今からでも遅くないんじゃないかと思って。
恋に障害は付き物。その方が燃えると思わない?」

