「大翔君を……避けてたわけじゃないの……。

どう接していいのか、急にわからなくなった。

一緒に動物園に行った日、大翔君は目の前で有紗さんに告白されてた」



すごくモテる人だってわかってたけど、告白されてるのを目の当たりにしたのは初めてで、そのショックが凄く大きかった。



でもそれよりも、もっとショックだったのは大翔君に好きな人がいるってこと。



女の人に苦手意識があるって、私が勝手に思い込んでただけで、好きな人や気になってる人がいるなんて聞いたことがなかった。



有紗さんに自分の気持ちを伝えるための嘘なのかなって最初は思ったけど、大翔君の“ずっと想ってる奴がいる”って言った時の愛しそうな表情でわかってしまった。



有紗さんの告白の返事を断るための嘘じゃなくて、本当に大翔君の中には大切に想ってる誰かがいるんだってことに。



宮内君に一番近くにいる女の子は私だって前に言われて、ちょっと安心していたのかもしれない。



私は、ただの幼なじみで、ただの同居人なのに。



あの時の本当に相手のことを想ってる表情の大翔君を見て、彼に想われてる“彼女”の存在がすごく羨ましかった。



いちばん近くにいるのは私で、みんなの知らない大翔君を知ってるのも私だけって思いあがってた。



そんな自分が恥ずかしくて、情けなかった。



それと同じくらいショックで、どうしてって思ったことがある。



それは、大翔君が好きな人がいるのに、どうして私との同居を了承してくれたのか————。