それでもブツブツ文句を言いながら、荷物を持って家の中に入りこんだ祥吾の背中を見ながら、俺に近付いてきたまりやがそっと制服の袖を握って不安そうに見つめてきた。



「……っ」



「大翔君……これ、どういうこと……? 何で谷山君が……」



祥吾のことが苦手なまりやにとって、一緒に住むなんてことは苦痛でしかない。



俺が最初からまりやとの同居を断ってれば、こんなことにならなかったのかもしれないけど、もしこの話を受けなかったとしても……俺はやっぱり、こいつのことが心配だから同じ結果になってたかもしれないな……。



何も知らない不安だらけなまりやの後頭部に手を回して、そのまま頭を引き寄せる。



「ごめん。勝手なことして」



それだけ告げると、照れ屋なまりやが俺に体を預けてくる。



「何か考えがあるんだよね……? 大翔君のこと信じてるから。

それに……大翔君の心臓の音……今の私と同じくらい……速く動いてる」



さっきまで不安そうな顔と声で俺を見つめてきたまりやが、俺が触れただけで安心したようにそんなことを口にする。



俺のせいでこんなことになってるのに、ちゃんとわかってるのか……。



1週間と言っても祥吾が近くにいると思うと、心配で堪らない俺の気持ちを。



「……危機感なさすぎ、お前……」



こんなことしてる時じゃないのに、思いきり抱きしめたい衝動に駆られる。



そんな気持ちを押し込めて、少しだけでいいからとまりやの温かさを暫くの間、抱きしめていた。