まりやに避けられるようになってから1週間が過ぎたある日。
米倉と笑って雑談するまりやを見ながら、ボーッとしていた。
「お〜い、大翔〜?」
「んー……」
呼ばれているのはわかっていたけど、全く気のない返事が口から出ていた。
「どういうことだ……。絶対零度の冷たさを誇る大翔の刃のような鋭いツッコミが俺に刺さらないなんて……っ!!
こんなことは出会ってから初めてだ。一体、大翔に何が起きたというんだ!
もしや、恋の病か!? 遂にお前にもそんな病が舞い降りたと言うのか。そうだったらこの光君が一番にお祝い」
「黙れ。暑さで遂に脳みそがイカれたか」
「うわぁ〜! 大翔、お帰りー! オレはその冷静さを兼ね備えたお前の鋭いツッコミを懐かしく感じるよ」
泣き真似をしながら、俺に抱き着いてこようとする気持ち悪い光にデコピンをお見舞いしてやった。
「おぉう……! な、ナイスな攻撃ありがとう……。
オレ、もうお前なしじゃ生きられない体なんだと思う」
「キモイこと言うな。もう一発お見舞いしてほしいのか」
そう言って睨みを返す俺に向かって、おでこを死守する光の顔が必死すぎて笑いにもならなかった。
光がいつにも増してバカさ加減を披露した昼休み、俺は嫌々こいつに屋上に連れてこられた。
「暑いのに、何が楽しくて2人きりになんなきゃいけないわけ」
日陰に腰を下ろし、生温い風を頬に感じながら、制服のネクタイを何故か酔っ払いの親父みたいに頭に巻きつけて、隣でパンを頬張る光に冷たい視線を送る。

