「大事な話してるんだから、祥兄は黙っててよ。ねぇ、どうなの? 答えられないの?」
「あの……私は……っ」
有紗の強い言い方に、まりやが困るのは当然だ。
いきなりこんなことを聞かれても、困るだけだよな。
まりやには他に想ってる奴がいて、俺のことなんて何とも想ってない。
俺じゃない他の誰かにまりやの気持ちが向けられてると思うと、苦しくて堪らなくなる時がある。
どうしたら、お前は俺だけを見てくれるんだろうって。
「小さい時からずっと、ヒロ兄のこと大好きだった。
どんなに好きだって伝えても、いつも適当に交わされて全然相手にしてくれなくて。
でも、あきらめずにいればきっと私に振り向いてくれるって思ってたのに。
まりやさんはズルイ。
あたしが見たかったヒロ兄のあんな笑顔も、優しさも……こんなに簡単にヒロ兄にさせるんだもん。
今日こそは、ヒロ兄の気持ちを振り向かせてみせるって意気込んできたのに……」
悔しそうに顔を歪めて、ポロポロと大粒の涙を急に流して泣き始めた有紗。
こういうところはやっぱりまだ、中学生なんだよな。
急に大人っぽい発言をしたかと思えば、すぐに子供のように泣き始める有紗の目線に合わせて口を開く。
「有紗、俺を想ってくれるお前の気持ちは嬉しいよ」
涙を目にいっぱい溜めて、鼻の頭まで赤くして泣いてる顔で俺を見つめてくる。
「本当に……?」
「ああ。でもな、お前がずっと想ってくれてたように、俺にもずっと想ってる奴がいる。
誰よりも一番大事にしたい奴がいるんだ」