「だって、本当のことだもん。ヒロ兄のこと本気で好きなんだから嘘ついても仕方ないし。

そういうことだから、まりやさんヒロ兄のこと好きにならないでね?」



胸の辺りを針でチクッと刺されたみたいだった。



「やめろ。そんなこと有紗が決めることじゃないだろ」



これが初めてじゃないのか、大翔君は言われ慣れてるみたいで素っ気なく返してたけど、それが逆に妙な寂しさを感じた。



それから有紗さんが大翔君にベッタリで、離れようとしないために予定外に4人で行動することになってしまった。



朝のあの楽しかった気持ちなんて、もう微塵も残ってなくて前を歩く2人を直視することができなくなっていた。



「浮かない顔してるね。有紗にヒロを取られて寂しいんじゃないの」



下を向いて歩いていた私の顔を覗き込み、口端を持ち上げて楽しげに笑う谷山君の顔が視界に入る。



心の奥を覗かれてるみたいで、気分が悪かった。



何も言わずにふいっと顔を逸らす私に谷山君は嬉しそうに笑っている。



「まりやってわかりやすいね。昔、俺がヒロとの仲を邪魔した時もそんな顔してた」



「そんな顔してない……」



「してるよ。なんなら鏡見てみる? 俺にとっては、まりやのそういう反応が堪らなく楽しいんだけど」



人の反応を見て面白がるところ、小さい頃と全然変わってない。



私が困って泣くのをいつも面白がってた。



何も言い返さない私のことをいつもからかって遊んで、私はそんな彼が嫌いというよりも苦手だった。