試合終了のホイッスルが鳴らされたと同時に、コートを出ようとしていた大翔君に宮内君がもじもじしながら話かけているのが見えた。



「キモイ。暑苦しいから側に寄んな」



「この絶対零度の冷たさ……本当にオレがお前のこと好きになったらどうしてくれんの?」



タオルで汗を拭う大翔君は、学校ではあまり見せない笑顔を宮内君に見せてから



「女好きのお前が男を好きになるとか絶対にあり得ないから心配ない。

例えそんなことがあったとしても、立ち直れないくらいに綺麗さっぱりフッてやるから安心していいぞ」



「うわー。暑かったはずなのに、オレの心が急激に冷えていくのがわかる。

お願いだから、氷の彫刻にするのだけはやめてね?」



自分の胸の前でクロス状に腕を組んで、身震いする真似をしてみせた宮内君に「勝手にやってろ」と冷たく言い放っていく大翔君。



そんな2人にも大きな黄色い声があちこちからあがる。



相変わらず仲が良い2人を微笑ましく思いながらクスクス笑っていると、私の頬をぷにっと横から突く指が現れた。



「嬉しそうに笑っちゃって〜! 確かに松っちゃん超カッコよかったもんね。

あれは、女子がハマるのも頷けるね。あたしもゲームのキャラだったら攻略してみたい人種だわ」



「そ、そんな嬉しそうな顔してないよ。でも、カッコよかったよね」



次のチームと交代で体育館の隅で休憩している大翔君を自然と目で追う自分がいる。



小さい頃から何でも器用にこなしてるから、私にできないことがあっても代わりにやってくれる大翔君に憧れてた。