3日前に転校してきた俺の従兄弟、谷山祥吾。



お得意のえくぼ付きスマイルで女子たちの心をがっちり掴んだ奴は、転校してきて3日だというのにもうクラスに馴染んでいた。



「大翔、おっはよ〜ん」



髪の色をミルキーブラウンの一つ暗めの色に落としたと、昨日の夜に女みたいなデコメを沢山使ったメールで自慢してきた光が上機嫌で現れた。



「何も変わってねーじゃん。お前、無駄な努力するのやめたら?」



挨拶もそこそこに、俺の口から放たれた第一声に、珍しく光が絶句した。



「大翔が冷たい! 冷たいのはいつもだけど、今日のは一段とそう感じる。

何も変わってないって、このオシャレな感性がわかんないお前がオレにはわかんない!」



気付けよと言わんばかりに、耳につけていたピアスもクロスピアスから小さな王冠が下がったフープピアスに変えたんだろう光は、わざと見せつけるような素振りまで見せた。



「別にわかんなくていいし。俺にはお前の感性とやらは、一生かかっても理解できないし、したくもない」



フイッと視線を逸らした俺に、いかにこの髪型にこだわりがあるかということを説明し始めた。



半分以上、右から左へ聞き流していた俺は、こいつに会ったら聞こうと思っていたことを口にした。



「光、お前……なんで祥吾が転校してくること言わなかった?」



ジロリと鋭く睨んで問うと、ゆっくりと黒目が横へ移動して逃げていく。



俺はそれを見逃さなかった。



「な、何のこと、かな〜?」



「とぼけんじゃねーよ。あいつが転校してきた日、祥吾に向かって言った第一声を忘れたとは言わせねーぞ」