大翔君の従兄弟の谷山先生とは、歳が離れてるし小さい頃に一緒に遊んだ記憶はほとんどなかったから、高校に入学して先生に声をかけられるまでまったく気付かなかった。



小さい頃に数回だけ会ったことあるお兄ちゃんが、まさか自分が入学した高校で教師をしてるなんて夢にも思わなかったし。



入学式に声をかけられて以来、こうして先生と面と向かって話すのは久しぶりで、何を言われるのかと私の中に緊張が走る。



「一言で言うと、あいつの性格はかなり厄介だ。厄介と言っても、色々と種類はあるんだけど……。
俺はあいつと兄弟やってきたけど、かなり手を焼いてるんだ。

ヒロも光も、中学が同じだったし、祥吾の性格はよく知ってる。この学校に転校してきたのだって、ちょっと変わった理由なんだよ。
本人は寂しいからって言ってたけど、本当の理由はそうじゃない。

とにかく、俺の予想が外れてなければ、藤沢……お前はたぶん狙われてると思う。ヒロもいるから大丈夫だとは思うけど、気を付けた方がいい。
話はそれだけだから。引き止めて悪かったな」



部活の時間が迫っていた谷山先生は、それだけを私に伝えると手をあげて教室を出ていってしまった。



谷山君って一体どういう人なの?



私が知ってる彼の性格は、小さい時の性格だし、人間そんなに変わるもの……?



でも、先生の表情からは嘘を言ってるようには思えなかった。



昔のことを謝ってくれて、ほんの少しだけ友達としての希望が芽生えてきたかなって思えてたのに、こんな話を聞いてしまってはそれどころじゃない。



話の内容も完全に理解できないまま、私も教室を後にした。



家に帰るまでの間、先生から言われたことを繰り返し考えてみるけど、何一つ答えなんて出なくて。



気付いたら、自分の家の前に着いていた。